District9(洋画)

投稿者: | 2021年8月25日
原題 district9
監督 ニール・ブロムカンプ
出演 シャールト・コプリー

≪まず言いたい事≫
ネタバレしないで面白さを伝えるのが大変すぎます^^;

≪おすすめしたい人≫
SF好き・ドキュメント好き(ドキュメンタリーではないが)・
コメディでもないし笑えないがユーモアを忘れないコプリーの演技を観てみたい人
暗いか明るいか、ハッピーエンドかバッドエンドかが観る人によって変わる映画好きな人
ハラハラドキドキの「どうなるんだ!?」という展開好き・テンポの良い映画好き

≪ご飯食べながら観られるか?≫
いや、止めておいた方が・・・^^;なんか垂れてきますよ^^;

≪ストーリー≫
南アフリカのヨハネスブルク上空にやってきた宇宙船はそのまま止まってしまい、
何の変化もなくなってしまった。その為、軍は宇宙船へ突入、
中に入ると死にかけた大量の宇宙人が。彼らを地上へ救出、それから28年後、
移民となった宇宙人達は、第9地区に隔離。エビと呼ばれる彼らは
MNUと呼ばれる国家の組織により監視・管理されていたが、
そこは現地の人間マフィアによって統治されるスラムと化していた。



彼らの起こす問題と近隣住民の避難の声を理由に、MNUの職員ヴィカスは
彼らを立ち退かせ、第10地区へと移住させる為、軍と共に第9地区へ向かうが、
真の目的は彼らの超強力な兵器を発見、奪うことであった。
エビ達の住処を兵器を探して漁っている最中、ある事件が彼を襲うのだった。



≪みどころ≫
ドキュメンタリータッチの撮影法が全編に渡って使われている。
編集も秀逸で、同じ場面にもかかわらず、大量のカットで構成。

人間語(英語)とエビ語なのに何故か通じている(笑)。

物語の冒頭から、軍関係の人間や医師、妻、義父で上司である人間達が
ヴィカスに関して思い思いのことをTVのニュースやインタビューで
“過去形”として語る。彼が一体どうなったのか?

CGで描かれたエビ(宇宙人)に違和感がないのはもちろんだが、
そのエビたちの異形の様相とは裏腹に、見た目が違うだけで
スラムに住む実際の人間と然程違わないのだと思わせるのは、
エビたちの態度とその“瞳”だ。きれいでかわいい目をしている。
主役級のエビに関してのみ、特に人間らしさを感じさせられた。
また、小さな子供のエビも出てくるので、この瞳がよけいにかわいく見える。



もうひとつはヴィカスや人間側の強欲さが彼の演技のお陰でより強調される。
彼の身勝手さ、人間至上主義でブラックユーモアを言い、
笑いながら取る冷酷な態度。全ての観客の目に映る彼の行動の矛盾。
その彼の矛盾こそが逆に、人間に一貫したもの、
つまり人間の傲慢さそのものを表している。
彼のみならず、大きな利益の為ならどんな命も簡単にすり潰す
国や企業の傲慢さもテーマのひとつかも知れない。

そして、エビとの友情と呼べるのかそうでないのかのような感情。
彼の思いやりがあるかのような言葉とは逆の自分勝手な行動と相まって、
巷にある大作の分かりやす過ぎる友情・感動とは一線を画す、
観客に複雑な気持ちをもたらすものになっている。

ヴィカスを演じたシャールト・コプリーは、台詞の台本を渡されたが、
白紙だったらしい。あれはアドリブなんだそうだ。その点も
みどころのひとつだ。また、彼はユーモアにも長けている。
劇中の深刻なシーン、追い詰められているシーンでも
ウィットに富む部分を披露、ユーモアは忘れない。
(でも、ハラハラし過ぎて笑ってられない^^)


≪レビュー≫
ただ宇宙人イジメの映画という情報以外、何の情報もなく観た自分は
かなりの衝撃を受けた。実際には“宇宙人をいじめる”映画という評し方は
的確ではないと思う。同じ“宇宙人をいじめる”という言葉でも、
まさかこういうイジメ方とは。イジメといっても、
その宇宙人?も反抗し続けるのだが。

正直、自分にはドキュメンタリー風味に編集された見せ方には
何故か映画のメイキングを観ているような、裏側を見せられた所為で
映画の価値そのものが安っぽく見えた気がして、
前半はボーッと観てしまっていた。
(もちろん、各メイキングは大好きだし、メイキングそのものや
映画の裏側が安っぽいと言っているわけではない)

しかし、MNUの軍隊と共に彼が第9地区に入る辺りから、
元来のSF好きも手伝って、画面にギュッと集中するようになっていった。

宇宙人が人間と話すことは他の多くの作品でも表現されている。
虐げられる宇宙人もSF映画ならいくらでもいるし、それは逆も言える。
しかし、それは銀河系や地球以外の星も当然舞台として
登場する場合での話だ。この映画に舞台は地球しか出てこない。
地球人はとりわけすごいテクノロジーを持っている訳でもない。
我々の過ごす、現在の地球と何ら変わらない。
そんな星に、ものすごいテクノロジーを持っているはずの宇宙人が
まるで人種差別かのような扱いを受け、貧しい生活を強いられ、
MNUの職員に見下され、時に卵(エビが生まれる前の)を焼き払われたり。

何が自分を画面に釘付けにしたか?
宇宙人の姿をした人間が、リアルに差別を受けているように見えたからだ。
横暴で傲慢な人間像がリアルに映し出されていたからだ。
例えば、どこかのTV局のレポーターが一般人に対して
笑いながら誹謗中傷するような言葉を投げかけ、相手が嫌がる行動を喜んでやる。
カメラマンもスタッフも皆がレポーターの悪質なシャレを喜び、
インタビューした人間全てを虐げながら笑う、
あり得ない最低な番組を見ている感じだ。

そして、速いテンポで次々と目に入ってくるカットと、
奇妙でどこか愛らしいエビたちの難民という斬新な発想・
ビジュアルが自分にこの映画に夢中にさせるよう仕向けた。

そこからすぐにヴィカスの身に降りかかるひとつの災難。
一気にハラハラさせる展開へと変わり、完全に目が離せない。
彼の冷たい強欲が、別の人間のそれに変わる。
そして、彼の行動の、一見矛盾に見えるものが、
実は一貫して人間の本質であるということを
見ている最中から思い知らされる。

明るい映画ととるか、暗い映画ととるか?
それは観た人次第だが、久しぶりにSFを観て、
CG技術や武器の豪快さなんかは最近のCGと変わらないが、
そうではない部分で非常に斬新で、従来の王道SFに飽きている人には
一味違うこの作品をおすすめしたいと思う。

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