シン・レッド・ライン(洋画)Thin Red Line

投稿者: | 2021年10月17日
実を言うと、シン・レッド・ラインは、先日初めて観たんです。

攻略が困難だと言われたガダルカナル戦線での話。
印象は、戦地で巻き起こる具体的な問題や戦いではなく、
戦争は原作者と監督の伝えたいことを表現する為に取り上げられた
ひとつの手段でしかなく、題材に使うものが戦争でなくても
表現できたであろう内容だったように捉えました。

戦争の虚しさや、人命の大切さ、
名誉や栄光のような分かりやすいものではなく、
もっともっと曖昧だけど、確かに感じるもの。
人に生きろと言い、突き動かす何か。
宗教やその神ではなく、
一人ひとりの中に確実にある何か。

映像は自然の綺麗さをスロー且つ長距離で捉え、
展開も非常にゆるやかに編集されています。
詩的な情景と登場人物が心中で思う言葉が
物語全体を形作っていました。
そう、まさに戦争映画やアクション映画ではなく、
これは詩そのもののように思います。

登場人物数人にスポットが当てられながら場面場面が変わっていきますが、
彼らの言葉は具体的なのに、それが指しているものは非常に曖昧で、
彼ら自身の自問自答が、そのまま観ているものの問いになります。

最近では、何でも言葉と行動で
ハッキリクッキリ分かってしまう映画や邦楽・ドラマが増えていますが、
こういった映画こそ、観客一人ひとりで受け取り方が変わり、
観た年齢によっても、自分の現状によっても捉え方が変わる、
何度も観たくなる映画でした。

主役が誰かとか、そんなこと大した問題じゃなく、
この約2時間から観たものが何を受け取ってくれるのか。
作品自体がそれを期待しているように思いましたね。

ちなみに、日本軍が負けていくシーンの展開だけは
歴史のそれも相まって、都合が良すぎに見えました…。
また、ウディ・ハレルソンの安っぽく見えて実はリアルな演技や
ものすごくシレッとしたジョン・キューザック、
内心は暗~いこと考えているのに表面的には部下にキレまくるニック・ノルティ、
むちゃくちゃ気弱で可愛いエイドリアン・ブロディなど、
様々な演技が見られます。
ショーン・ペンの演技はさすがと思わせます。
もちろん、ジム・カヴィーゼル、名脇役のジョン・C・ライリーなど、
その他にも豪華な顔ぶれですが、
キャラクターを用いて観客に問いかけておきながら、
登場人物はあくまでその糧で、役者の演技を見るための映画だと
思って観ると、ちょっと物足りないかもしれないですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です